ドイツ語圏スイス公共放送 SRF が Gerhard Minnameier に行ったインタヴューの内容を纏めたものです。質問者は Christa Gall。
倫理的資本主義-実験にもっと勇気を
2014年1月14日
Davosで昨日まで開かれていたWEF世界経済フォーラムは「倫理的資本主義」というテーマの討議の場を設けたが、この問題に取り組む代表的な研究者へのインタヴュー。
WEFは«Ethischer Kapitalismus»倫理的な資本主義というフォーラムを打ち出しましたが、自己矛盾ではありませんか?
経済を根底まで考えて見ると、矛盾はありません。 より良い環境、より高い生活の質、労働と人生のバランス変更などいろいろな望みは社会が解決策を見つけなければならない必要性の表現です。 需要と供給の原理はここでも有効で、社会的、環境的な観点からの要請も効率的、効果的な解決策を見つける必要があります。 経済的な視界を狭めて考え、それによって短絡に陥ってはいけません。
それは、市場経済制度は根本的に考え直す必要が無いということですね。
市場経済制度から決別することでは問題を解決することは出来ません。 適切な構造を安定させ、枠組みを作り上げなければなりません。 縁故経済、談合、政治と経済の癒着があるために、市場経済が機能しない場合に問題が起きてくることが多いのです。 ですから、問題は競争が多すぎるためだけに起きるのではなく、少なすぎる場合にも起きます。
例えば?
例えば、財政危機は基礎的な市場経済原理が損なわれたことに起因しており、その逆ではないのです。 大きな金融機関は何時の日か過重負債を負っても、破綻することを怖れなくても良いことになっています。 なぜなら、危機に陥った場合には納税者によって救済されるからです。 負債リスクを引き受けた後、非常に危機的な事態になった場合でも、負債の責任を自ら引き受けなくても良いのです。 これは異常増殖とその結果としての社会での望ましくない再配分に進む経済の形です。
スイスでは度々、自由市場の制限について住民投票が行われます。最近の発議は給与の最高額を制限しようというものでした。 反対者は何時もと同じ理由で脅しをかけます。 もし、スイスが企業や経営者に最良の条件を出さなければ、みんな出て行ってしまうというものです。 世界を跨ぐ規則が必要なのでしょうか?
世界を跨ぐ規則は当然必要です、でなければ、倫理的に行動する人たちは競争にハンデを負う事になり常に搾取され得ます。 これは根本的な問題です。 大きな疑問はしかしまた、誰が規則を作り、誰が実行するかです、そしてなによりもその規則が何処から導き出されるかです。 これは多くの場合ちょっと救世主を呼ぶ声のように聞こえます。 国際会議で政治家が自分の国の利害を主張するというか、主張せざるを得ないときに、どのように決議したらよいのでしょうか。
解決策は?
そう簡単には解決できません。 どうしたら国境を越えて規則を適用できるか? それは次のようなものです: 第一歩として、何が起こっているかを理解することです。そして、一方ではより理解を深め、他方では失政への反対圧力を生み出すための幅広く多層的な論議が必要です。このような政府と企業への圧力はイノヴェーションへのエンジンとしても必要ですが、議論と理解が無い場合はポピュリスト的な反応へと導かれてしまいます。 それで、両方とも同じように重要なのです。 そして、時として社会的な実験も必要です。
では、それぞれの国がもっと勇気を持って、新しいルールを単独で試して見るべきだと?
はい、以前ドイツでは国際的なトレンドに準じた環境指標を作りました。 批判者は当時も、それは競争力を殺ぐ事になると怖れていました。 現在、私たちは指標があって良かったと思っています、それは、指標によって環境技術で競争優位性を獲得し、それで私たちは良い商売をすることが出来ました。 これは経営者の給与制限とそれに伴う優秀な経営者の逃避という脅しにも当てはまります。 優秀な人が出て行ってしまうとは思えません。 なぜなら、人間にとってカネが唯一の重要な要素ではないからです。 これは、普通の労働者でも経験することです。 大多数の人は居心地の良い職場と土地に留まり、収入が最も多くなるというだけでは他所には移りません。 そこで、私はもっと実験するべきだと主張します。
まず取り掛かるべき緊急の問題は何だと考えられますか。
金融機関の問題は最初に話しましたね。 次の問題は富裕への志向です。私たちは将来、工業国で幅広い層が富裕を享受できなくなることに慣れなければなりません。 また、労働市場での競争に勝てない人たちとどのように付き合っていくかという疑問を解かなくてはなりません。 もうひとつの大きな問題は税金だと私は思います。 企業は低すぎる税という形で、公共の責任を逃れます。 企業は一方ではインフラと安定した制度を利用しますが、それに対する貢献は小さすぎます。 他方では、国同士が税金で競争することは合法です。 他の言い方で言うと意義のある規則は常に均衡が取れていなければなりません。