以下の文は2014年12月26日にベルンの新聞Der Bundに掲載されたChristoph Neidhartの分析記事を直訳したものです。Christoph Neidhartは現在東京在住のフリージャーナリストで、ロシア-スカンディナヴィア-バルト圏、そして東アジアのエキスパートとして知られている。
日本国憲法を変えることは彼の「歴史的挑戦」だとクリスマスイヴ、内閣首班に再選された後、安倍晋三は語った。 彼が特にやりたいと考えているのは日本にあらゆる戦争遂行だけではなく常設軍隊の保持も禁止する平和条項の廃棄だ。 この第9条は、多くの歴代政権から新解釈がされてきている。 安部の祖父、1957年から1960年まで内閣首班だった岸信介と同様に、安倍自身も今年、新たな解釈をした。 日本は世界最大の軍隊のひとつを持っており、既に長い以前から自衛戦争を自らに許している。 安倍にはこれでは十分ではない。 彼の日本は軍事的にも地域の支配的勢力にならなくてはならない。 彼の政党、自由民主党が提示した憲法改正案ではしかし、平和への責務を放棄するだけではなく、曖昧な表現で日本をその独裁的な過去に導くことを望んでいる。 そのために、人権と表現の自由が制限される、少なくとも個人的な権利を切除する道具を政府に与える。 女性は平等権を失うことになる。 そして、改正案は国民の権利だけではなく、近代的な民主主義の憲法としては類の無い国民の国家に対して負うべき義務も規定する。 安部は12月14日の選挙の後でもアベノミクス、経済立て直し計画について語るが、それは彼のナショナリズムを安定的な経済基盤に乗せたいと考えているからに過ぎない。 彼は経済に興味を持ったことは無く、明らかではあるがあまり意味の無い選挙結果を彼の右傾化への支持だと彼が理解する今では経済への興味は全くなくなっている。 経済の建て直しには彼が有権者の多数の反対に抗して打ち出す原子力発電所の再稼動も含まれる。 日本では40トン以上の原子爆弾転用可能なプルトニウムを原子力工業が貯蔵している、これは潜在的な核保有国だ。 安倍の「歴史的挑戦」は第二次世界大戦中に安倍の祖父の世代の大国幻想の下で苦しんだ近隣各国の激しい抗議を引き起こした。 しかし、日本国内でも激しい抵抗に遭っており、首相が国会両院で憲法改正に足りる多数を保持している一方で、国民はこれまで、あらゆる世論調査ではっきりと反対を表明している。 安部が新憲法を押し通すためには、議会での可決の後、国民投票が必要だ。 この国民投票は彼の最大の「歴史的挑戦」になる。 彼が、彼の祖父が1960年にUSAとの安全保障条約更新で国民多数の反対を押し切ったように、日本国民を引きずり出すことが出来るだろうか? 岸は路上に出た数十万人の抗議者をヤクザ団体に暴力で追い払わせた。 日本は「普通の国」になるべきだと首相は自らを正当化する。 彼の目には、平和的ではなく、軍隊を持ち、あらゆる機会に戦争をするのが「普通の国」だと見えるのだ。 安倍にはおそらく、その出自からして、日本を東アジアで「普通の国」にするチャンスがあるのだろう。 そのためには、彼は第二次大戦中の日本の歴史を、矮小化するのではなく、認めなくてはならない。 しかし、安倍晋三がその影を飛び越えたことはまだない。