Postauto
ある程度以上の年齢のスイス人、モトリゼーションがまだ本格化していなかった時代に子供だった年代の最初の冒険の思い出の多くは黄色いバスに結びついています。 都市の子供が初めて見た田舎、田舎の小学生が初めて体験した都市は大抵この黄色いバスが無ければ実現できないものでした。
その時代には、多くの村と外界を結ぶものは郵便と郵便バスだけでした。 現在でも、多くの通勤、通学客にとって郵便バスは現実的に無くてはならない交通手段ですが、多くのスイス人が頭の中で描くPostauto像は多かれ少なかれ冒険と結びついています。
このようにスイス人の生活と深く結びついているPostautoは今から丁度100年前に誕生しました。 その第一号路線は首都ベルンからWohlen経由でDetligenまでのものでした。 この路線はまだ存在しますが、路線番号は100となり延長されて、美しい中央広場を持つAarbergまでとなっています。
Detligenには、多くの村で廃業してしまったチーズ製造所がまだ営業しています。 また、都市では味わえない田舎の人たちの集まるレストランなども残っています。 観光アトラクションはありませんが、観光地と都市だけではなかなか見ることが出来ない、スイスの顔がここにはあります。2006年03月13日
アルプス・ルート
Postautoはそれまで公共交通手段としては唯一の存在で、十九世紀には既にアルプスの峠越えのルートを通行していた郵便馬車の後継者として生まれました。 第一次大戦後、1920年代にアルプスのルートを走り始めましたが、1947年、Susten峠越えの道路が開通して、三つの峠越えができるようになり、本格的な観光ルートとなりました。 1980年にGotthard-Pass ゴットハルト峠越えの下を貫けるトンネルが開通して以来、実用的な大量国際輸送ルートとしては峠越えの使命は小さくなりましたが、観光ルートとしての価値は以前にも増して高くなっています。 アルプス・ルートは企業としてのPostautoにとっては採算に合わないものですが、上記したようなスイス人の冒険のイメージと最も強く結びつく路線を廃止することはなかなかできるものではありません。 これは、慣れない外国でレンタカーを運転するのも億劫だという外国人個人観光客にとってはありがたいことだと言えます。
Swiss Made?
第二次大戦後の復興期、物資、稼働能力不足が顕著になり、Postautoも運送機材を外国に求めなくてはならなくなりました。 少数のバスをUASから、1947年と1948年にはイタリアのAlfa Romeoから二つのシリーズのバスを調達しました。 しかし、これらのバスはスイスの冬に適するものではありませんでした。 この時期を除けば、Postautoの車両は長年にわたって全て国産でした。 今日では、しかし、82年に主要メーカーだったSaurerのバス部門がMercedes-Benzに買収されるという出来事が象徴するように、国際競争力では、小さなスイスのメーカーは外国の大メーカーに太刀打ちできなくなり、85年に最後の国産バスが納入されて以来、外国の車両が調達されるようになっています。 しかし、WTOの規定に従う国際入札の際にメーカーには200に近いPostautoの独自仕様を実現する能力が要求されます。 これも、運転手の技術と共にスイス人がPostautoに信頼を寄せる元になっています。 また、使命を終えたバスはスイス国内で売ることは許されず、輸出されることになっています。
乗り換え
今日のPostautoは路線の始発、または終着点が鉄道の駅になっているのが原則です。 しかも、鉄道とバスの運行時刻が同期しているのです。 例えば急行を降りるとそこにもうバスが待っている、またはPostautoから降りて暫くすると目的地への列車が到着する、というのが当たり前になっています。 小さな駅では階段を昇り降りすることなく乗換えができることも珍しくありません。 これは他の国ではなかなか例の無いことです。 Postautoの時刻表は印刷物としては独立して販売されていますが、オンラインでは他の多くの私鉄と共にSBB連邦鉄道の時刻表(左の写真をクリックしてください)に統合されています。 鉄道の路線との組合せでも、自由に検索することが出来ます。
もうひとつの検索の強い味方はsearch.chで、スイスに特化したウェブ検索と電話帖そして、なによりも航空写真を使った精密なインタラクティヴ地図が役に立ちます。
百年記念 2006年
記念行事としては、まず5月13日にAarbergとその周辺で全国記念式典があります。 大部分の行事は一般に公開され、第一号路線の終着点Detligenまでの記念バス運行、オールドタイマーのパレードならびに展覧会、記念機関車の命名式、街祭りなどが予定されています。
ベルンの通信博物館では6月2日から9月3日まで、主にPostautoの歴史を内容とする記念展示会が開かれます。
ルツェルンの交通の家では6月8日から8月20日まで特別展示会Swiss Innovationsが開かれ歴史的な、そして最新の黄色いバスが展示されます。
Postautoの特別便も予定されています。 多くはガイドつきの日帰り旅行で、幾つかの便は既に満席となっています。
Postshop
記念発行物も記念切手は当然として、記念硬貨、腕時計、懐中時計、ボールペン、 帽子、ジャケットが特別デザインで売り出され、各展示会の売店、郵便局またはインターネットを通じて買うことができます。 また、全国でプレゼントの日が設けられ、その日の乗客には記念品と共に、ルート地図、100周年記念の小冊子が贈られます。
それから スキーの季節には、スキー用具を積むトレーラーを牽引するスキー場行きの便が運行されます。 また、サイクリングが盛んに行われる季節には、同じく自転車を積載するトレーラーを引くバスが運行されます。上りはバスで、下りは自転車で、という訳です。 ただし、スキー、自転車とも積載可能数に限りがありますので、休日、学校休暇中などは早めの予約が必要です。
Postautoは地域バスの運営も請け負っています。 各地の週末夜間バス、呼び出しバスなどが主なものですが、近年は外国にも進出しています。 リヒテンシュタインと、主にスイス国境に近いフランスの地域バスの運営を担当しています。 ただし、バスの色は黄色ではありません。
Postautoの三音からなるクラクションも愛されているもののひとつです。 RossiniのオペラWilhelm Tell(もちろん、スイス建国の伝説の勇者)から取られています。